陸上競技:走りの基礎~短距離走

※ 記事の最後に、おすすめ参考書籍情報あり。

理論編(速く走るには)~陸上競技全ての基本

(1) 世界の一流ランナーは、100mを50歩前後で走る。この歩数でいかに速いピッチで走るかが重要(2m以上の歩幅で 10秒間に50回以内のピッチで走る)。つまり、スプリンターは非常に敏捷な神経爆発的に動く筋肉が必要となる

(2) 一般には、35m~45m付近が一番速く、70m付近から徐々に減速していく。それを食い止めるためには、優れた筋肉と正確な(走る)技術が必要。

(3) 地面をキックした足は、素早く尻の下にかいこまれ、膝が高く引き上げられる。
このとき、後方へ軌道が大きくふくれ出ているのは、「脚が後ろに流れている」悪い動作(ピッチが遅くなる)。

(4) 腕振りとは反対に腰の横軸がひねりあっている(上体と下体がひねりあってバランスを保っている)。このひねり(ヒップスウィング)が、ランニングでの脚の動作を大きくし、ダイナミックでカ強い歩幅(大きなストライド)が生まれる。

(5) 緊張しすぎるとスムーズな動作ができなくなる。スピードが出ないばかりか、無駄なエネルギーを消費してしまうので、リラックスして走る

(6) 着地の脚の膝がよく伸びていることが重要。膝や足首で緩衝(吸収)して力を逃がさず、パワーを全て地面に伝えると、地面から反動で前に進む力がもらえる。

(7) 「脚の運び」「腕振り」のどちらかに正しさが欠けては、よいランニングはできない。左右両方とも正しい動作でなくてはならない(自分の癖を矯正する)。特に、短距離の腕振りは重要な役目。

(8) 「ストライドを広げる」という意味を誤解してしまうと、大きなミスにつながる。身体の重心の先に足をもっていく(置きにいく)「オーバーストライド」は、ストライドの長さを増すことができても、同時にピッチを激減させてしまう。

技術編(各段階別のポイント)

スタート~加速 (25~30m付近まで)

💡 スタート合図に瞬時に反応し、後足側の腕(肘)を素早く大きく後ろに振る。
💡 前足のブロックを、つま先と膝が目いっぱい伸びるまで瞬発的に強く押す(爆発的なイメージ)。
💡 後足は蹴り上げず、膝からまっすぐに胸に引き付けるように前へ引き出す。
💡 上体はすぐに起こさず、体の軸を一直線にして深い前傾を保つ。このとき、つま先から頭までが一直線になっていない(腰・首で折れている)と、力が地面に伝わらない。
 ※ 筋力が必要なため、小学生に深い前傾は無理(腰から折れ力が逃げる)。
💡 静止状態から重心を前にずらしアンバランスな状態にすることで、前傾姿勢もキックも可能となる。重心が前に動いてからキックする感覚や前に腰が移動する感覚が分かると、2歩目、3歩目とひたすらまっすぐな軸を持続することができる。
💡 歩幅は無理に広げず、早いピッチで足を運ぶ。腕も素早く振る

中間疾走 (30m~80m付近まで)

「腰の高い走り」をするため以下を意識する。振り下ろした足の膝がつぶれると、腰の落ちた走りになり、緩衝作用で力を逃がしてしまう。

💡 前足の「振り下ろしスピード」(股関節まわりの筋肉が重要)を速くする(ムチのイメージ)。
💡 「膝や足首をブロック」(極力つぶさない)する。腰・膝・首が曲がっていると、力が地面に伝わらない。
💡 左右の足の「切り替えを速く」する。右脚と左脚の入れ替えのタイミングが重要。「振り遅れ」ると、足が後ろに流れ、腰もピッチが落ちてしまう。
「前足が接地したときに、後ろ足の膝が追いついている」のがベスト!

上級編:実は、最後まで後ろに蹴っていると足が流れてしまう。やや早目にキックを止め、足を前に引き出す動作に移行するタイミング(ストライドを犠牲にしないベストな切り替えタイミング)をつかむ。
ラストスパート(80m以降)

💡 足が流れオーバーストライドになりがちなフォームを立て直し、ムチのような速く強い振り戻しを意識する。
💡 トルソー(胴体部)を突き出してゴール板を走り抜ける。

※ 細かな技術習得には、スプリントドリル部分練習が重要ですが、選手自身がこうした理論を理解し、考えて練習させることが大切です(小学生でも!)。
正しい練習メニューで、正しいフォームが身につけば、結果(記録)は、必ずついてきます

トレーニング編1「アップ&スプリントドリル」

初心者(小・中学生)に最適なドリルメニュー ※毎日実施

(1) 100mウォーキング(かかとを上げて腰を高く)
(2) 200mジョグ(ウォーキングの姿勢を維持し、かかとを上げて腰を高く)
(3) 準備体操(ストレッチ)
 膝の屈伸 ⇒ 伸脚(深く) ⇒ 大腿四頭筋・二頭筋 ⇒ アキレス腱 ⇒ 足首・首・肩甲骨回し ⇒ 肩周辺(上・前) ⇒ 背伸び体側

(4) スプリントドリル(ポイントを意識して正しく練習すれば必ず早くなる!)

① 股関節伸展(大また歩き)
 ※ 上体を垂直に保ち、足を前後に最大限開き、腰を目いっぱい落とす

② 股関節回し
※ 腕を水平に広げ、膝を肘に当てるように上げそのまま前に

③ 股関節回しツーステップ
 ※ リズムよく、反動で大きく回す。

④ 腕立てで左右の足を交互に入れ替え
※ ひざが腕の外に出ないように
※ 足を前後に最大限開く(前の膝は胸につく、後ろはしっかり伸ばす)

⑤ もも上げジャンプ
※ 高くジャンプし、肘を大きく振って大腿部を水平まで引き上げる

⑥ 大きくスキップ(膝を水平まで引き上げ前に出す)
※ ツーステップで、一歩を大きく(大きく前に進む意識)
※ お尻が落ちないように、立っている足をピンと伸ばす

⑦ バウンディング(右だけ ⇒ 左だけ ⇒ 左右交互)
※ ひざを高<引き上げて、股関節を最大伸展
※ 上体をやや前方に倒し、弾んで大またで走る。
※ かかとを着かない

⑧ その他(時々実施する)

○ 足のスウィング ⇒ 振り戻し
※後ろ足を大きく振り上げ素早く振り戻す。設置時に膝・足首をつぶさず、頭からつま先まで一直線に。

○ 足の切り替え ⇒ ツーステップ
※片足もも上げ姿勢から、左右の足を超素早く切り替える。腰(頭)が落ちないように。 

〇 スピードステップ
※段差を使い、左右の足を超高速で入れ替える。 

(5) 腕振り(2人組)
※ペアの相手は、後ろで肩の高さに手を置いて、そこに肘を当てさせる

○ 両手同時
※鼻の前で両手を合わせ、肘を90°のまま目一杯後ろに振る(反動で戻る肩の高さに手まで)。
※体が前のめりになりやすいので、直立をキープ。

○ 左右交互
※ 肘の角度は90°を保つ。肩や手の力を扱いて肘で振る(円運動)。(肘が伸びると早く振れないことを体感させる)
※ 前後に大き<振る。後方には、肘から肩が地面と水平になるまで振り、その反動で前方へは親指が目の横に来る位置まで振る。

トレーニング編2「短距離走」基本

※基本練習メニューは、毎日1~2セット行う。

① スタートダッシュ(加速走)の練習
10m、20m、30m、40mと徐々に距離を伸ばしていく。(または30mを5回)
前の感覚を残しながら、距離を伸ばして、加速度に合った軸の角度を決めていく。
スタート練習は、1日中ということもある。

② 中間疾走の練習(ウインドスプリント:スピード持久)
200m (70%) →150m (80%) →100m (90%) →50m(100%)で、間をジョグやスキップ・歩行でつなぎ、1・2セット行う。
速いスピードをできるだけ長く保つため(スピードの持続)の効果的な練習法。

※ シーズン中は、スピード持久、スピード、調整だけ。スピード持久は試合で使うような疾走スピードレベルを確保することが重要。遅いスピードでは効果はない

スピード練習で大切なことは、本数の確保にある。ここで、スピードを上げるために本数を少なくすると調子が一気に上がってしまい、狙った競技会を下降状態で迎えてしまう。

※ 最終的な調整の段階は、20mダッシュ、20mの助走で60m全力走とか、スタートからの60mなど(加速走のみ)。

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