スパイクピンの選び方、血液検査数値の見方(中・長距離)、
追い風参考(風の影響)、電動計時と手動計時の差、
トラック各レーンの距離の差など、
意外に知らない「豆知識」や「役に立つ情報」を整理しました。
スパイクピン・レジナスクロウの正しい使い方
選手に合った適切なスパイク・ピンを選ぶことは大切ですが、
間違った使い方(選び方)が意外に多いスパイクピン。
道具を正しく使うことは、記録向上に加えけがの防止にもつながります。
ピンの長さ(重要です!)
スパイクピンの長さについて、メーカーの説明書に
・短距離(100m・200m)は8~9mm
・中距離(800m・1,500m)は7~8mm
・長距離(3,000~10,000m)は5mm
と書いてあるため、この通りに使っている選手が多く見受けられます。
しかし、スパイクピンは、選手の特性(走法・筋力・発達段階など)や、
レースの気温・天候などによって、
同じ種目であっても適切なピンの長さは異なります。
説明書にも、よく読むと、
「ピンが長いほど足への負担が多いこと、未発達な段階や筋力を考慮して自分に合ったピンを探す」
と書いてあります。
事実、200m日本記録保持者の末續慎吾選手は、7mmピンを使っていました。
自分の脚力や走り方に合わない長すぎるピンは、
記録が伸びないばかりか、足を痛める危険性もあります。
未発達な小学生が、ミッドソール(プレート)の固い短距離用スパイクを使用したり、7mm以上のピンを使ったりすることは避けるべきです。
中長距離も、長すぎるピンは足に負担がかかり「ピンばて」を起こします。
新しいトラック・スパイクなら、ピンなしで走った方が好記録が出ることも多いほどです。
ピンのタイプ・種類
※ゴールド(ブラック)ピン・シルバーピンの違いと、レジナスクロウ(アタッチメント)
◆「トッピングトラック」用のゴールド(asics)・ブラック(Mizno)ピンは、
レジナスクロウ(アタッチメント)の装着が必須です!
(ねじ部分の長さが長いため、レジナスクロウを装着しないとねじがインソールを突き上げることになり危険です。)
◆「ノンチップトラック」用のシルバーピンに、
レジナスクロウ(アタッチメント)を付けてはいけません!
(ねじ部分の長さが短いため、レジナスクロウを装着するとねじがきちんと締まらずグラついたり外れたりします。)
※その他、競技や走りに合わせて、
グリップタイプピンか二段平行ピンを選択します。
シューズの選び方
シューズは、
◆アウトソール(地面と直接触れる接地部分。グリップ力や推進力を強化する素材・形状)、
◆ミッドソール(ソールの中間部分。着地の衝撃吸収による足への負担軽減や、プレートの反発による推進力)、
◆アッパー(足がぶれないホールド性や通気性)
などから成り、競技種目や練習目的、発達段階(筋力等)に応じて、
自分に合ったシューズを選ぶことは、極めて重要です。
「レーシングシューズ」は、
着地時のバランス補強やサポート力、スピードを引き出す反発力に優れています。
しかし、基本は「足そのものの筋力」で走ること。
普段の練習からレース用のシューズをはいていると、
バランスキープやスピードをシューズに頼ってしまい、
足本来の機能を鍛えることができません。(足首の可動域や足の指の機能を鍛えられない)
トレーニング時は、オーバーユースによる故障を防ぐためにも、
「トレーニング用シューズ」で走りましょう。
もちろん履き慣らしておくことも大切なので、
タイムトライアルなどでの使用は効果的です。
レース用のシューズやスパイクも、
自分のレベルに合わせてステップアップを図りましょう。
競技力も筋力もない小学生(初心者)は、
けがを防ぐためにも短距離用・跳躍用などではなく
オールラウンド用のスパイクからはじめ、
競技レベルや成長(筋力)に応じて徐々に専門的なスパイクにしていきます。
また、同じ長距離用でも、競技者用と市民ランナー向けでは、
ソールの作りが全く違います。
自分が使う道具の機能や性能、良し悪しを自分で理解して選択できるよう指導してあげることも大切です。
道具の機能と重要性を知れば、「かかとをつぶして履く」など絶対にせず、大切に扱うようになります。
血液検査数値の見方(中長距離選手)
中長距離選手にとって、オーバーワークを防ぐことは、
けがを防ぎ「超回復」のサイクルをつくる上でも重要です。
「心拍数」等で疲労度や練習強度を確認することに加え、
定期的な血液検査で「貧血」を防ぐことも大切です。
以下に代表的な項目とその見方をまとめました。
貧血検査
※ 検査項目と基準値・期待値(女性の場合)
① | Hb(ヘモグロビン濃度) | 12 | ~ | 15.5 | g/dl |
血液中に酸素を運ぶ ⇒ 呼吸が苦しくなり持久力が落ちる | |||||
② | Fe(血清鉄) | 50 | ~ | 160 | μg/dl |
血しょうの中でトランスフェリチンと呼ばれるタンパク質と結合して運ばれる鉄 | |||||
③ | フェリチン | 4 | ~ | 70 | ng/ml |
肝臓、膵臓、骨髄で保存される貯蔵鉄 ⇒ これが減ると回復に数ヶ月かかる | |||||
④ | RBC(赤血球数) | 380 | ~ | 500 | 万/μl |
血液中に酸素や栄養を運ぶ | |||||
⑤ | Ht(ヘマトクリット) | 35 | ~ | 45 | % |
血液中の赤血球の占める割合 | |||||
⑥ | MCH(平均赤血球血色素量) | 28 | ~ | 34 | Pg |
低色素性貧血かどうかを調べる | |||||
⑦ | MCHC(平均赤血球血色素濃度) | 31 | ~ | 35 | % |
多汗の人が数値が低い ⇒ こまめな水分補給を心がける | |||||
⑧ | PLT(血小板数) | 13 | ~ | 35 | 万/μl |
高値で血が固まり易く、低値で血が止まり難く(低値:悪性貧血、再生不良貧血、白血病) | |||||
⑨ | WBC(白血球数) | 40 | ~ | 90 | 万/μl |
感染による炎症、肉離れ、筋膜炎、骨折等の外傷でも上がる。低値:悪性貧血、再生不良貧血、放射線障害 | |||||
⑩ | MCV(平均赤血球容積) | 85 | ~ | 100 | fl |
ストレスが大きいほど高い、低い人は本番に強い? 良質の鉄、タンパク質を摂取 |
※ MCV、MCH、MCHCが低値の場合、鉄欠乏状態が疑われる。
疲労度検査
※ 検査項目と基準値・期待値(女性の場合)
① | HDL(善玉コレステロール) | 40 | ~ | 77 | mg/dl |
トレーニングで上昇。持久力の指標 ⇒ 低値は持久力なし | |||||
② | UN(尿素窒素) | 8 | ~ | 22 | mg/dl |
腎機能の指標(低下すると上昇) ⇒ 全身疲労度の指標(疲労で高値) | |||||
③ | CPK | 30 | ~ | 172 | IU/l |
筋破壊で上昇。500で中程度、700で相当期間調整必要、1,000で故障 | |||||
④ | TP(総タンパク) | 6.5 | ~ | 8.3 | g/dl |
低値の場合、栄養障害で疲労も取れない。練習量に食事が追いつかないと下がる |
フライングとは
陸上競技における不正スタート(フライング)とは、
スタート合図から0.1秒未満で体が動いた場合です。
英語では「False Start(=不正出発)」といいます。
フライング発見のために、スタートの合図から0.1秒以内にスターティングブロックに力が加わると、圧力センサーが反応しピストルと連動する「不正スタート発見装置」が使用されています。
フライングの反応速度基準はなぜ「0.1秒」なのでしょうか。
これは、人間が音を聞いて体を動かすまで最低でも0.1秒はかかるという医学的根拠に基づいています。
人間が外的刺激を感知し大脳が判断して身体が反応するのに、
最低でも0.1秒はかかるといわれているため、
0.1秒未満の動作は合図を聞かずに動いた(フライング)と判断されるのです。
国際陸連(IAAF)は、2010年から不正スタートのルールを改正し、
混成競技以外のトラック種目では、1回目のフライングで失格となりました。
追い風参考記録とは
競技中の風速が、
・100m・100mH等の直線競技や、走幅跳・三段跳では2.0m
・三種競技などの混成競技では、4.0m
を超えた場合は追い風参考記録となります。
一部種目は追い風参考記録がなく、全て公認されます。
「追い風」とはスタート時の瞬間風速では無く「風速の平均値」です。
風向風速計は、直走路の第1レーンのフィニッシュライン手前50m、トラックから2m以内、高さ1.220mに設置され、1/100秒単位の計測値は切り上げられます(例:秒速2.03m→秒速2.1m)。
追い風と向かい風(=トラックに平行して吹いている風)の秒速だけを測定。
左右方向(90度)に吹いている風は測定されません。
追い風・向かい風の記録への影響
風が、記録にどの程度影響するのでしょうか?
追い風よりも、向かい風の方が記録への影響は大きくなります。
※ 以下は参考データです。
電動計時と手動計時の差
電動計時と手動計時の誤差は約0.2秒(手動の方が速くなる)とされています。
一般的に、100m、200m、100mH、110mHでは0.24秒、
400m、400mR では0.14秒の修正をしています。
(例:手動12″2 → 電気12″44と同じランク)
手動計時は、人間の視認および動作に頼る方式のため、
複数の手動計時員が配置(ゴール地点にある階段状の椅子)され、
計測値が一致していなければ平均値が採用されます。
計時員が2人の場合は遅いほうのタイムが記録になります。
トラック各レーンの距離の差
一般的な競技場は、円弧の部分の半径は37.898mです。
直線部が160 m、レーン幅は1250mm(大阪長居は1220mm)。
1レーンは縁石より300mm外側で計測、
2レーンからは200mm外側で計測。
レーン(走路)の幅は1m220とする。レーン(走路)の幅が1m250で公認継続している競技場は、トラックおよび走路の全面改修および公認満了が2021年4月1日以降の検定から1m220の基準を適用する。
日本陸上競技連盟競技規則より
直線部分は80m。π=3.1416で計算(mm単位以下は5捨6入)
※ 以下は設計計算値です。
1レーン=400.00566 m=120.00566 m(円弧の部分)
2レーン=407.23134 m
3レーン=415.08534 m
4レーン=422.93934 m
5レーン=430.79334 m
6レーン=438.64734 m
7レーン=446.50134 m
8レーン=454.35534 m
9レーン=462.20934 m
※つまり、1レーン外側を走ると1週につき7~8m長く走ることになってしまいます。この点からも、中長距離において位置取りは重要です。
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