現代文(読解問題)の解き方

国語は楽できる教科

前記事:「AI時代を生きる子どもたちに必要な力とは?」で、国語力(読解力)が低い現状とその重要性について考えてみました。
しかし、本当は、国語ほど楽できる教科はないと思っています。
なぜなら、国語は、他教科に比べ「覚えるものが少ない」上に、「答え(の根拠)は文中にある」からです。
文の構成をとらえ、正しく読み解く力(リーディングスキル)さえ身につけば、それほど多くの学習時間をかけずとも安定して点が取りやすい教科です。
逆にこの読解力がないと、数学や物理等の難しい問題を解くこともできません。
ただ、国語が苦手と感じている方に多く見られる、点を取るための「解答技術」(難解な文を読み解くツール・ヒントにはなる)にばかり頼ると、真の読解力はつかないので注意が必要です。

読書量 = 読解力 ではない!

読書が趣味の方はたくさんいます。でもその方々が全て国語が得意(高得点が取れる)とは限りません
これは、毎日ジョギングしている市民ランナーが、トップランナーにはならないのと似ています。
趣味として読む・走るのと、競技として力を鍛えるのとでは、求めるものが違います。
読書は心を豊かにし、ジョグは心も体もリフレッシュしてくれます。
しかし、平易な文章をサラッと読んでいても、自分に合った楽なペースで走っていても、適切な「負荷」をかけなければ、力は向上しません
負荷は「難文」や「複雑な文」を「熟読する」ことであり、「良問を丁寧に解く」ことが大切という点では数学と同じです。
国語でも数学でもスポーツでも、適切な負荷(良問)と適切なやり方で学習せず、ただ問題数(練習回数)をこなしていると時間ばかりが過ぎ力が付かないため、苦手意識が膨らみ悪循環に陥ります。

また、論説文・評論文などを読むには、言葉を知ること(語彙力)も必要になります。
文の構成(主語・述語、接続詞、比喩など)や、パターンなどを理解しながら、一語一語を丁寧に熟読し、文を構造化(画像化・イメージ化)する読み取り方について、注意点を整理してみましょう。

読解の基本(共通事項)

文章を映像(イメージ)化する

文章は、基本的なルール(文法)にのっとり言葉を紡いだものです。
「これは、写真です。」
「これは、A君の写真です。」
「これは、私の友人A君が大切にしている写真です。」

というように、修飾語がついて長くなっていき、表現したいことが増えるに従って
「この写真は、私の友人A君が大切にしているもので、写っているのは彼のお母さんです。」
主語が微妙に代わったり複数の文がつながったりと、徐々に複雑になっていきます。
「この写真に写っている女性は、ある人のお母さんです。若くして病気で急逝した彼女の想いをずっと心に…、そう考えいつも大切に持ち歩いています。そうですよね、A君…。」
こうなると、「誰の写真だっけ…?」と混乱が生じてきます。単純な主・述関係ではないため、技術に頼る読み取りでは対応できなくなります。ここに難しい語句や表現方法などが加わってくると、さらに難解になっていきます。

しかし、もともとは「『写真』を題材に何かを伝えたい」という作者の頭に浮かんだ映像(イメージ)を文章化したものです。文の構造や構成を丁寧に読み解き、その逆(読み取って映像化)していければ、シーンは理解できます。これは、他教科における難解な問題文を読み解く際も同じです。 
※ 語彙を増やす(難しい語句を知る)ことは必要です。

読解問題を解く際の注意点

問題を先に見ず、本文を読み進めて(味わって)いき、問題の箇所(線や□)に当たったら、その文の終りまで読んでから一度止まって問題を見る。
⇒ そうすると、答えやどの辺を見ればいいかの見当がつく。先に問題を見て変に技術に走ろうとすると、正しく読み取れなくなってしまう。
○ 解答を探しだすための様々なコツや技術は、迷ったとき等の「手がかり」に過ぎない
⇒ じっくりと問題を読み味わえば(正確に細かく読み取っていれば)、ほとんどの問題で答えの見当はつく。
○ 答えに迷ったら、その前後をよく読む
○ 答えには、必ず「根拠」がある。 ⇒迷ったら、それを見つける。
○ 問題となっている部分の意味をきちんととらえてイメージする。
・ 出てくる言葉を大切に ⇒それが意味をとらえるヒントにもなる
○ 難しい問題は、本文と問題を何度も行き来する。
◆ 選択問題
選択肢を先に見ない!本文を読んで、答えの見当をつけてから選択肢を見る
・ 本文にそれが「本当に書かれているか」確認する。⇒勝手な深読みをしていないか!
・ 消去法 ⇒本文中に必ず根拠がある
・ 選択肢の文中に「合っている箇所を」を見つけただけで早合点せず、書かれていることが「全て正しいか」を読み取る。(「随所に・・・」、「象徴的に・・・」本当にそう言えるか等)
⇒ 部分ごとに傍線を引き○×を付ける。
○ 要旨を短文にまとめる問題は、その文だけで文意が通じるように書くのが大原則。(指示語「それ」などが急に出てくるのはおかしい)
○ ムダ(余計)なことはしない。 ⇒かえって迷うことになる。
◆ 表現の工夫について知る
【比喩法】⇒強調したいことがある。様子をイメージしやすい
・「直喩」・・・「〜のようだ」「〜に似ている」など,ある事柄を他のものに例える方法。
例「お盆のような月」⇒お盆に例えることで月がまん丸であることを表現・強調
・「隠喩・暗喩」・・・「~のよう」などの語を省略し「AはBだ」とする表現方法です。例「強烈な印象を心のカメラに焼き付ける」⇒「強烈な印象」を「写真」に記録するように「心」に鮮明に記録(鮮明さを強調)しています。
擬人法・擬人化】⇒詩的イメージが伝わりやすい。文章が生き生きする
修辞法(言葉を美しく巧みに用いて効果的に表現すること)の一つ。活喩法。人間でないものを、人間に見たてて表現し、文章に親しみや詩的な効果をもたらしたいとき、強調したいときに使います。
例「風のささやき」「小鳥が歌う」「ペンを走らせる」
⇒ 小鳥は「鳴く」だが、小鳥を人に見立てて「歌う」と表現することで、生き生きと(楽しそうに)かわいらしい声で囀っているイメージが浮かびやすい。
夏目漱石の「吾輩は猫である」、芥川龍之介の「河童」などはこの方法による作品。

説明文・論説文

「指示語」の指す内容は直前にあることが多い。⇒指示語に代入してみる
「前のことを指す言葉」が指す内容を探すには、直前の文だけでなく、段落(まとまり)全体を読み取る必要がある。
文の構成や書き方(結論が先か後か等)をとらえ、文を通して「問題とされていることは何か」をつかむ。
・三段式(序論⇒本論⇒結論)、二段式(序論⇒結論結論⇒本論
段落の役割と流れをつかむ(「問題提示」「例示・説明」「理由・根拠」「対比」「転換」「まとめ」等)
・各段落の中で、どれが「要旨」で、どれが「例示・言い換え」なのか読み分ける
「指示語」で段落の構成が分かる(続きか、逆説か、まとめか等)
「転換」・・・ところで(話が変わる) ⇒ 別の話題を出す(その話題が、後にその前までの段落と、どうつながるか(どういう役割を持っているか))
「逆説」・・・しかし(反対のことを言う)
「順接」・・・だから(前の文を受けて続ける)⇒この段落の根拠は前の段落にある
「並列・累加」・・・また(前の段落に付け足したり別の例を挙げる)
「説明」・・・つまり ⇒ 前の段落の要約(まとめ)、言い換え(別の言い方)
「対比・選択」・・・それとも ⇒ 前の段落と別の見方選択肢を挙げ問題を提起
○文を読み進めながら、各段落のポイントとなる文を見つける
キーワード(繰り返し出てくる言葉)に着目。⇒文のテーマや本題のヒント

物語文

○物語文では、心情の変化は「セリフ」「動き」「表情」だけでなく、そのときの「情景の表現」からも分かる。
「場面の変化」「心情の変化」に着目する。
物語に没頭する(登場人物になりきって気持ちを考える)⇒時にはセリフを自分なりに表現してみることで、なぜそう言ったのか、真意を読み取る(「ばかやろう!」と「ばかだな」では、バカに込めた思いが違う)。

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