小論文・面接対策<医学部受験>

大学受験(医学部)の小論文・面接の準備として大切なのが、医療用語に関する基礎的知識(理解)と、自分の考え方について整理しておくことです。医学部受験にあたり知っておくべきテーマと、考え方(留意点)の参考例をまとめました。

医学部 小論文・面接 テーマ集

インフォームド・コンセント

医療行為(投薬・手術・検査など)や治験などの対象者(患者や被験者)が、治療や臨床試験・治験の内容についてよく説明を受け十分理解した上で(英: informed)、対象者が自らの自由意思に基づいて医療従事者と方針において合意する(英: consent)ことである(単なる「同意」だけでなく、説明を受けた上で治療を拒否することもインフォームド・コンセントに含まれる)。説明の内容としては、対象となる行為の名称・内容・期待されている結果のみではなく、代替治療、副作用や成功率、費用、予後までも含んだ正確な情報が与えられることが望まれている。また、患者・被験者側も納得するまで質問し、説明を求めなければならない。

留意点
留意点

患者・家族が説明内容を十分に理解した上で合意形成がないと、病院に対して不信感を抱き、十分な治療効果をあげられなくなることがある。患者の尊厳を守り、患者・家族の権利や不安に配慮し、選択する医療行為の利害と患者・家族の生活、人生への影響を考えられるようなプロセスを重視し、形式的にならないよう留意する。

セカンド・オピニオン 

セカンドオピニオン(英: Second opinion)とは、よりよい決断をするために、当事者以外の専門的な知識を持った第三者に求める「意見」、または「意見を求める行為」のことである。医療分野の場合、患者が検査や治療を受けるに当たって主治医以外の医師に求めた「意見」、または、「意見を求める行為」。主治医に「すべてを任せる」という従来の医師患者関係を脱して、複数の専門家の意見を聞くことで、より適した治療法を患者自身が選択していくべきと言う考え方に沿ったものである。セカンド・オピニオンは「診療」ではなく「相談」になるため、健康保険給付の対象とはならず、全額自己負担となる。

プライマリ・ケア(総合医療)

緊急の場合の対応から、健康診断の結果についての相談までを幅広く行う医療のことです。プライマリ・ケアを行う医師(総合医)は、そのための専門的なトレーニングを受けており、患者さんの抱える様々な問題にいつでも幅広く対処できる能力を身につけている『何でも診る専門医』です。必要なときは最適の専門医に紹介します。在宅診療や地域の保健・予防など、住民の健康を守る役目も担っています。プライマリ・ケアでは多様な病状の診断、治療を行うため、様々な専門分野の知識を幅広く必要とします。

留意点
留意点

総合診療医は、医師の少ない地域ばかりでなく、高齢化社会に不可欠な存在となると考える。高齢の患者は複数の疾患を抱えている場合が多く、個々に専門医を受診しているだけだと、全てのケアを俯瞰的にコーディネ イトできなくなる。頻度の高い健康問題に対応し、相談にのりながら適切な問題解決をはかる総合医のニーズは、高まっていくと考えられる。

地域医療

 病院など医療機関での疾患の治療やケアにとどまらない概念。地域住民の健康維持・増進を目的として、医療機関が主導し、地域の行政機関・住民・企業などが連携して取り組む総合的な医療活動。疾病の治療・予防、退院後の療養・介護・育児支援など幅広い分野に及ぶ。
地域医療において医師および医療従事者は、地域住民全体の幸福を常に考えながら医療活動を行うことが求められる。予防活動は疾病の治療と同等に重視される。医師や医療従事者が地域の住民に働きかけて、疾病の予防や健康の維持、増進のための活動を行うこと。疾病の治療にとどまらず、リハビリテーション、在宅療養のサポート、地域で暮らす高齢者、障害者の支援などの事業。妊婦の保健指導や相談、子育ての支援なども行われる。最近では、在宅の引きこもりの児童から成人などへの関わり等もその活動範囲となる。こうした活動を医療機関が単独で担うのではなく、地域の行政や住民組織と協力してすすめていくことが特徴である。地域医療においては、医師や医療従事者の活動と同等に、地域住民の健康を守る活動が重視されている。地域医療とは、医療を通じて社会の民主化、住民自治を推進し、医師と地域住民が手を取り合ってより良い地域社会を築いていくことをめざす活動である。

留意点
留意点

へき地医療、離島医療が医療を行う「場」を表すのに対して、地域医療は医療を行う上での「姿勢」「ベクトル」を表す言葉であり、都市部にも地域医療はある。医師個人の姿勢と能力が重要である。
地域医療を行うために必要なこと。①地域を知る ②地域医療を行える臨床能力(内科、外科、小児科、精神科、整形外科…、「総合的(家庭医療学的)に診る力」、高齢者医療、多職種協同など)を身に付ける ③地域医療を行っている医療機関 で働く

Disney爺
Disney爺

Ex) 何かおかしい…それぞれの専門医が対応し診断はついているが、患者は救われていないケースが多々ある。
※ 医師にとっては何千人と出会う患者のうちの一人。患者にとっては、一生で数十人しか会わない医師の一人。自分の一言が、その人の人生を変えるかもしれない。健康のスペシャリストとして、患者のために大いに勉強し発信を。学生の時に考えていた「医師像」は、実際に医師になると現実に流されてしまう。だからこそ、学生の時に、しっかり「理想の医師像」を作っておくことが大切。

医療過誤

医療過誤は、日本においては、刑事責任(業務上過失致死傷など)および民事責任(被害者に対する債務不履行又は不法行為に基づく損害賠償責任や使用者による懲戒など)の原因となり得る。医療過誤の民事訴訟は年間800件程度だが、患者側の勝訴率は約2割であり、これは医療機関側の過失が明らかな場合、訴訟前和解(示談)となる場合が多いためである。
医療過誤の隠ぺい、記録の改ざん等の問題が多発しているが、医療過誤訴訟の原告の多くは、訴訟理由を「医療ミスに対する怒りよりも、事故後の病院側や医師側の、誠意のない対応や見え透いた嘘の言い訳が許せないから」であり、「本当に医療ミスだったのか?その責任の所在は何処にあるのか?」という真実を知りたいことが多い。

留意点
留意点

医療の世界では、様々な要因により患者が亡くなってしまうことがある。単純なヒューマン・エラーによる要因があったとしても、事故を単なる個人の過誤によるものだと簡単に片付けず、その事故が起きた背景と今後起きないようにするための対策、そして医療過誤に対する適切な病院や社会の対応が重要である。医師不足による多忙化の問題、研修医等経験の浅い医師・看護師への指導体制・サポート体制の問題、ヒューマン・エラーを防ぐチェック体制の問題など、原因を明らかにし、改善を図っていくことが重要である。

遺伝子医療 

遺伝子治療は最初、遺伝性疾患と呼ばれる遺伝子に異常がみられる患者さんを対象に試みられた。遺伝子の塩基配列に異常があり、ある種のタンパク質が作られないことで起こる病気であれば、それを根本的に治すには遺伝子レベルでの治療が必要であると考えた。
遺伝子を使った治療には、いろいろな方法があるが、その一つとして、患者さんの骨髄から幹細胞を取り出し、ウイルスのベクターと呼ばれる運び屋を利用して健康なヒトから取り出した正常な遺伝子を細胞の核のDNAに組み込み、その細胞を特殊な方法で増やして、もとの身体に戻す方法がある。体内で正常な遺伝子が働き、今まで作られなかったタンパク質が作られて病気が治る。

再生医療

病気やけがで失われた臓器や細胞・組織・器官の働きを再生し、機能を回復させるため、細胞や組織を体外で培養したり、加工したりして体に移植する医療。臨床研究や治験の段階のものが多い(皮膚移植・骨髄移植・臓器移植など)。究極的にはES細胞やiPS細胞などの分離培養による組織そのものの再生を目指す。
再生医学を行う手法として、クローン作製、臓器培養、多能性幹細胞(ES細胞、iPS細胞)の利用、自己組織誘導の研究などがある。将来的には遺伝子操作をした豚などの体内で人間の臓器を養殖するという手法も考えられている。自己組織誘導については、細胞と、分化あるいは誘導因子(シグナル分子)と、足場の3つを巧みに組み合わせることによって、組織再生が可能になるとみられており、従来の材料による機能の回復(工学技術に基づく人工臓器)には困難が多く限界があること、臓器移植医療が移植適合性などの困難を抱えていることから、再生医学には大きな期待が寄せられている。

iPS細胞

皮膚や血液などの細胞に特定の遺伝子を導入し、心臓や神経、肝臓などさまざまな細胞になれる能力を持たせた細胞。一定条件で培養すれば、無限に増やすことができる。再生医療のほか、病気の仕組みの解明、創薬研究など幅広い応用が期待されている。山中伸弥・京都大教授らが2006年にマウスで、07年にヒトの細胞で作製に成功し、山中氏は昨年、ノーベル医学生理学賞を共同受賞した。

脳死・臓器移植 

臓器移植は、病気や事故によって臓器(心臓や肝臓など)が機能しなくなった場合に、人の健康な臓器を移植して、機能を回復させる医療。健康な家族からの肺・肝臓・腎臓などの部分提供による生体移植と亡くなられた人(脳死後または心臓が停止した死後)からの臓器提供による移植がある。移植できる臓器は、心臓、肺、肝臓、腎臓、膵臓、小腸及び眼球(角膜)。もしものとき、誰かの命を救うことができるかもしれないし、助けてもらうかもしれない。わたしたち一人ひとりが、今、臓器提供について考え、家族と話し合い、自分の臓器提供に関する意思を表示しておくことが大切(臓器提供の意思表示は、「提供する」という意思だけでなく、「提供しない」という意思も等しく尊重される)。
臓器移植法第6条において、死亡した者が臓器移植の意思を生前に書面で表示していて、遺族が拒まない場合に限り(2010年からは、本人の臓器提供の意思が不明な場合にも、家族の承諾があれば臓器提供が可能となり、15歳未満の者からの脳死下での臓器提供も可能になった。)「身体」を「死体」に含むとしてその臓器を摘出できると規定する。

新型出生前診断

妊婦から採血しその血液中の遺伝子を解析することにより、胎児の染色体や遺伝子を調べる非侵襲的検査である。母体血中にある胎児由来遺伝子を調べることにより、胎児の性別・血液型診断、単一遺伝子病や染色体異常の診断、妊娠高血圧症候群の発症予知・胎盤機能評価の評価などを目的とする。なお、検査が可能なのは21トリソミー、18トリソミー、13トリソミーの異常のみである。この3つ以外の染色体異常は見つけられない。非侵襲的でかつ高精度の出生前診断法であるため優生的な目的への応用が危惧されている。あくまでも確定診断ではなくスクリーニング検査と考えられるため、倫理的な問題の本質は従来の血清マーカーテストと同じと考えられる。

留意点
留意点

こうした医療技術の革新は、いち早く疾患を見つけ治療するという医療の目的にはかなう。しかし、胎児診断については、異常が分かった場合、その多くが中絶を選択する。診断結果を通じて、胎児という生命にどう向き合っていくのか、医者もその両親も、よく考えなくてはならない。

赤ちゃんポスト

設備の目的は、赤ちゃんを殺害と中絶から守ることにある。日本では唯一、熊本県熊本市にある慈恵病院がこのシステムを採用しており、同病院では「こうのとりのゆりかご」という名称を使用している。平成19年から平成25年11月30日までに同病院が相談を受けたケースのうち特別養子縁組に至った190件中、43件が若年層の妊娠によるものであり23%の母親は15歳未満であったという。中には強姦の被害者や、小学5年生の出産のケースもあったという。相談を重ねた結果自分で育てることにしたケースが235件あり、その他も含めて453人の赤ちゃんの命が中絶などから救われた。

代理出産

代理母出産については、生殖補助医療の進展を受けて日本産科婦人科学会が1983年10月に決定した会告により、自主規制が行われているため、日本国内では原則として実施されていない。しかし、代理母出産そのものを規制する法制度は現在まで未整備となっている。2008年4月、日本学術会議は、代理懐胎の法規制と原則禁止などを内容とする提言を行った。

生殖補助医療 

人工授精や体外受精などの生殖技術を用いて子をもうけようとする不妊治療の総称。体外受精などの生殖補助医療で生まれる子どもは増え続け、約27人に1人の割合だ(2012年)。日本産科婦人科学会は代理出産や第三者による卵子提供を認めない立場をとるが、法的拘束力はない。自民党のプロジェクトチームが昨年10月、代理出産を一定の条件で認めるなどの法案をまとめた。生殖補助医療は、当初は「神の領域に人の手が入る」生命操作への抵抗から是非が議論された。だがそうした抵抗は不妊治療としての普及とともに徐々に薄れ、現在先進諸国では出生児の1割以上が、何らかの生殖補助医療を経て生まれているといわれる。

留意点
留意点

生殖補助医療は、配偶者間で行われるだけでなく、精子、卵子、受精卵、子宮などに支障がある場合、第三者の提供を受ける形でも広がっていった。そこでは、極端な場合、遺伝上の親(精子、卵子の提供者)と生物学的な親(懐胎し出産する人)と社会的な親(養育の責任を引き受ける人)がすべて異なる事態も生じうる。第三者の提供を介することにより、生殖年齢を超えた人や、単身者や同性愛カップルなどにも、生殖補助医療を利用して子をもつ道が開かれた。ここに、誰がどこまで生殖補助医療を用いてよいのかという、従来の家族観を超えた複雑な倫理的、法的、社会的問題が生じることになる。また生殖補助医療の安全性についても、生まれてきた子の追跡調査のデータが乏しく、いまだ医学的に確定していないのも問題である。

少子高齢化社会

日本の急激な少子高齢化の主たる要因としては、出生率の低下による少子化と平均寿命の伸長による長寿命化の二つがあげられる。老年人口比率が、極めて短期間に、かつ、かなりの高率になることが、日本の高齢化の特徴としてあげられる。また、老年期は前期老年期(65~74歳)と後期老年期(75歳以上)に分けることができるが、それぞれの人口比率の変化をみてみると、日本の場合、老年人口のなかでも特に後期 老年期人口の増加が著しい。この後期老年期には、寝たきりや認知症の発現率が高まることが指摘されており、高齢者介護に対する今以上の対応が必要となってくる。

留意点
留意点

少子化による若者の人口減少に伴う、医療や介護の労働力不足に反し、高齢者の数は増え続けているため、人手不足で一人あたりの仕事量(負担)は増す一方で、老老介護や介護施設不足で入居できない等問題が山積。年金や医療費などの社会保障費の増加は若者の負担増となり、さらなる少子化を招くなど負のスパイラルに陥る恐れがある。健康寿命を延ばすことが重要である。

老々介護

高齢者が高齢者の介護をせざるをえない状況のことで、日本のような高齢化社会を形成している国家ではよくみられるケースである。高齢の夫婦や親子、兄弟において妻が夫の介護を、息子が母の介護を、妹が姉の介護をというケースなど様々なケースがあり、家族が共倒れする危険性や介護疲れによる心中事件もあることから大きな社会問題となっている。老老介護の増加に伴い、認知症の高齢者を介護する高齢者自身が認知症を患い、適切な介護が出来なくなる「認認介護」も増加している。この場合、第三者のケアが必要となるが、プライバシーの問題もあってなかなか家庭内に立ち入ることが出来ないのが問題である。

健康寿命

日常的に介護を必要としないで、自立した生活ができる生存期間のこと。厚生労働省は、2010年の統計では日本人の健康寿命は男性で70.42歳、女性で73.62歳であると2012年6月に発表した。

生活習慣病

日本では生活習慣に起因する疾病として、偏った食事、運動不足、喫煙、過度の飲酒、過度のストレスなど、好ましくない習慣や環境が積み重なると発症のリスクが高くなる。主として、がん、脳血管疾患、心臓病などが指摘され、それらは日本人の3大死因ともなっている。糖尿病・脂質異常症・高血圧・高尿酸血症など自覚症状がないままに進行し、命に関わる上記の疾患を引き起こすことから、生活習慣病は“サイレントキラー”と呼ばれている。肥満はこれらの疾患になるリスクを上げる。また肥満自体が生活習慣病のひとつともされることがある(なお、肥満に関連して起きる症候群をメタボリックシンドロームとも呼ぶ)。

留意点
留意点

糖尿病、高血圧、高脂血症などを伏線に、狭心症や心筋梗塞、脳梗塞などの脳血管疾患を併発するだけでなく、肥満に伴う変形性ひざ関節症や腰椎のヘルニアなど足腰の異常も起こる。つまり、生活習慣病は、一つの病気にとどまらず、様々な病気や合併症が同時並行的に起こることが最大の問題。逆転の発想で行けば、生活習慣(運動習慣や食生活、休養、喫煙、飲酒など)を見直すだけで、多くの病気がいっぺんに解決する可能性があるともいえる。「医食同源」

QOL 

QOL=Quality of life(クオリティ オブ ライフ)は「生活の質」「生命の質」などと訳され、患者の身体的な苦痛の軽減、精神的、社会的活動を含めた総合的な活力、生きがい、満足度という意味が含まれる。がん治療を受けている患者は、病気の進行に伴う食欲不振、貧血、呼吸困難、むくみ、痛みなどといった不快な症状に加え、抗がん剤による吐き気、脱毛、白血球の減少や、手術を受けたあとの機能低下・損失といった副作用に悩むことがある。その中でも、いかに自分らしい生活をするかといった点に着目してその質を高めることをQOLの向上という。
治療効果は高いが副作用も大きい治療を選ぶか、治療効果はあまり高くなくても副作用が少なく体に優しい治療を選ぶか、といったときにも患者のQOLは重視される。また、漢方薬を併用することで治療による副作用症状を緩和したり、リラクゼーションやストレス解消のためのエステなどもQOLの向上に役立つ場合もある。

終末期医療(ターミナルケア)

死が避けられない病気の患者とその家族に、痛みや苦しみを和らげることを目的とするケアは「ホスピス」や「緩和ケア」と呼ばれる。痛みや食欲不振、全身倦怠(けんたい)感、呼吸苦などの身体的な苦痛だけでなく、悩みや不安、生きがい喪失といった心の症状を緩和するため、医師や看護師、ソーシャルワーカー、宗教家やボランティアらがチームとしてケアにあたる。
終末期の患者は、老衰、ガン、アルツハイマー型認知症、レビー小体型認知症、筋萎縮性側索硬化症、筋ジストロフィー、パーキンソン病などの進行により、特定の臓器の機能不全または多臓器不全になっているため、医学的・生物的に延命は不可能であり延命治療は行なわず、病気や障害からの回復や、病気や障害の進行の遅延や、心身の機能の維持を目的とする医療も不可能であり行なわない。終末期の患者に対して身体的苦痛や精神的苦痛を緩和・軽減することによって、人生の質、クオリティ・オブ・ライフ(QOL)を維持・向上することを目的として、医療的処置(緩和医療)に加え、精神的側面を重視した総合的な措置がとられる。

緩和ケア・ホスピス

WHO(世界保健機構)は「緩和ケア」を次のように定義している。「緩和ケアとは、生命を脅かす疾患による問題に直面している患者とその家族に対して、疾患の早期より痛み、身体的問題、心理社会的問題、スピリチュアルな問題に関してきちんとした評価をおこない、それが障害とならないように予防したり対処したりすることで、クオリティー・オブ・ライフを改善するためのアプローチである。」「ホスピス」は、主にがんの末期患者の全人的苦痛を、チームを組んでケアしていこうというもの。ホスピス・緩和ケアの特色としてチーム・アプローチがある。患者と家族を中心に、医師、看護師、ソーシャルワーカーなどの専門職とボランティアとで構成するチームによるケア。

リビング・ウィル

リビング・ウィル(英語: living will)とは、生前の意思という意味の英語の音訳。生前に行われる尊厳死に対してであれば「尊厳死の権利を主張して、延命治療の打ち切りを希望する」などといった意思表示のこと。またそれを記録した「遺言書」などのこと。インフォームド・コンセントの浸透とともに、このような考え方が広まってきた。ほかに葬儀の方法や、臓器提供の可否などがリビング・ウィルの対象として論じられることが多い。自然死(尊厳死)を望む場合であれば死に直面した患者が、自らの意志で延命治療を拒み、死を迎えようとする考え方。その場合に「苦痛を取り除くことを目的とする安楽死に対して、無理な延命措置により患者の尊厳が損なわれるのを避ける」ことが尊厳死の目的である場合もある。

尊厳死と安楽死

尊厳死:人間が人間としての尊厳を保って死に臨むことである。尊厳死を保つための手段のひとつとして、苦痛から解放されるためにペインコントロール技術の積極的活用が挙げられる。無意味な延命行為の拒否については、実際に死を迎える段階では意識を失っている可能性が高いため、事前に延命行為の是非に関して宣言するリビング・ウィル(Living Will)が有効な手段とされる。

安楽死:患者本人の自発的意思に基づく要求に応じて、患者の自殺を故意に幇助して死に至らせること(積極的安楽死)、および、患者本人の自発的意思に基づく要求に応じ、または、患者本人が意思表示不可能な場合は親・子・配偶者などの自発的意思に基づく要求に応じ、治療を開始しない、または、治療を終了することにより、結果として死に至らせること(消極的安楽死)である。

留意点
留意点

終末期医療の法制化が議論されている。リビング・ウィルに法的効力を持たせようとするものであるが、終末期の定義と判断、家族の同意、医師の免責など難しい問題を抱えている。「生きる権利」の一部として「死を選ぶ権利」を認めるようなものであり、「尊厳死」という言葉自体が、「この状態で生きる意味があるか」という、命の価値づけ的な要素をはらんでいる。命の重さとQOL…、相反するともいうべきテーマを持つ終末医療には、まだまだ議論が必要だ。

救急医療

現在の日本における救急医療体制は、都道府県が作成する医療計画に基づいており、二次医療圏までで対応させるとしている。また、その「重症度」に応じて以下の3段階で対応することとされている。救急指定病院もこれらの段階のうちどの段階まで対応するか想定した上で患者受け入れ体制をとっている。しかし、こうした重傷度に応じた体制には限界があり、初期(一次)~三次救急と独歩来院を包括して診療する北米型のERシステムを採用する病院も出てきている。

トリアージ

一般には災害医療において、負傷者等の患者が同時発生的に多数発生した場合に、医療体制・設備を考慮しつつ、傷病者の重症度と緊急度によって分別し、治療や搬送先の順位を決定することである。助かる見込みのない患者あるいは軽傷の患者よりも、処置を施すことで命を救える患者を優先するというものである。

医師不足

医師の絶対数の不足、病院での必要医師数の不足、地域偏在による不足、診療科に属する医師の需給不均衡による不足、給与レベルに属する医師の偏在による不足、外来患者数に対する医師不足、業務量増大による医師不足、集約化不足による医師不足がある。 ※ 後述

卵子凍結保存

体外受精を行い子宮に戻す目的で、未受精卵を凍結保存する技術のこと。従来は、若年女性がん患者が化学療法や放射線療法を受ける前に卵子を体外に取り出すことによって、治療による生殖細胞への影響を回避する方法として試みられるものであったが、近年パートナーがいない女性が将来の妊娠に備えて自分の卵子を凍結保存する事例が増えている。

TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)

環太平洋地域の国々による経済の自由化を目的とした多角的な経済連携協定 (EPA) である。貿易が自由化することで国民皆保険制度の崩壊営利企業の病院経営参入外国人医師の受け入れ、混合診療の全面解禁が挙げられる。

キュアとケア 

ケア(CARE)とは、看護師向け雑誌のタイトルにてよく採用されている語句で、 直訳すると 看護、世話、介護、介助といった意味合いで、看護師が行うような仕事(行為)のこと。
キュア(CURE)とは、 一文字違いながらcareとは違う意味を持つ言葉で、 直訳としては、医療、治療(人や病気を治す)といったような意味合いで、医師が行うような行為を指す。
なお、類似語のhealに関しては、 医師による人の手で人や病気を治すことではなく、薬などにより、人を治す・癒すように導くことをいうようだ。

自殺とうつ病

日本の自殺者305名の遺族を対象にした調査を元にした危険複合度の分析によれば、主な根本要因として「事業不振」、「職場環境の変化」、「過労」があり、それが「身体疾患」、「職場の人間関係」、「失業」、「負債」といった問題を引き起こし、そこから「家族の不和」、「生活苦」、「うつ病」を引き起こして自殺に至る。 つまり統計的に見ると、自殺の根本要因には社会的な要因があることが多い。日本においては、高度救命救急センター搬送の自殺未遂者の80%以上について、DSM-4基準に基づく精神疾患が認められた。また自殺既遂者305名の遺族調査によれば39%がうつ→自殺という経過をたどっていた。ただしうつ病は自殺の根本要因ではなく、同調査は他の根本要因がうつを引き起こしていることを明らかにしている。

最近の話題・現代的課題の理解(直近3年程度)

本庶佑氏にノーベル医学生理学賞 オプジーボ開発でがん免疫療法革命

がんの新しい治療法を切り開いた本庶佑(ほんじょたすく)京都大特別教授(76)と、米テキサス大のジェームズ・アリソン教授(70)に、ノーベル医学生理学賞を贈ると発表した。授賞理由は「免疫の働きの低下を防ぐがん治療法の発見」。二人は、がん細胞が人間の免疫の攻撃から逃れる仕組みを発見し、その仕組みを抑える薬が、二人の研究成果をもとに開発され、これまで治らなかったがんが免疫の力で治るようになった。
<オプジーボ>小野薬品工業が2014年に発売した新たな種類のがん治療薬。体内の異物を攻撃する免疫の力を強め、がんを排除する「免疫療法」の薬で、手術やがん細胞を破壊する抗がん剤放射線に続く第4の治療と期待されている。国内では、肺がんや胃がんなど7種類のがんを対象に保険が適用されている。ただ年間1000万円以上かかるとも言われる医療費が財政を圧迫するのが問題点。

本庶佑氏インタビュー

Q:研究者に大切なことは?  ⇒ 医者も同じこと(好奇心・探求心、真実を見る目)

「研究者においていちばん重要なのは、何か知りたいと思うこと、不思議だなと思う心を大切にすること。教科書に書いてあることを信じない。常に疑いを持って、本当はどうなっているんだ、という心を大切にする。つまり、自分の目でものを見る。そして自分の頭で考えて、納得できるまでやると言うことです。」

「研究者の醍醐味とは、誰も見向きもしない岩からのわき水を見つけ、小川からやがて大河にまで育てることである。また、山奥に道なき道を分け入り、初めて丸木橋を架けることが私にとっての喜びであり、丸木橋を鉄筋コンクリートの橋にすることではない。」

Q:今後、このがん免疫療法をどのような治療の選択肢として発展させていきたいか?

「この治療は、例えるなら、感染症におけるペニシリンというふうな段階でありますから、ますます、これが、効果が広い人に及び、また、効かない人はなぜ効かないのかという研究が必要です。世界中の人がやっていますから、やがてそういうことが、いずれは解決されて、感染症がほぼ大きな脅威でなくなったのと同じような日が、遅くとも今世紀中には訪れるという風に思っています」

Q:日本の研究の方向性についてどう思うか? また、日本の製薬企業についてどう感じているか?

「生命科学というのは、まだ私たちはどういう風なデザインになっているかを十分理解していない。AIとか、ロケットをあげるというのはそれなりのデザインがあり、ある目標に向かって明確なプロジェクトを組むことができる。しかし、生命科学は、ほとんど何も分かってないところで、デザインを組むこと自身が非常に難しい。その中で応用だけやると、大きな問題が生じると私は思っています。つまり、何が正しいのか。何が重要なのかわからないところで、『この山に向かってみんなで攻めよう』ということはナンセンスで、多くの人にできるだけ、たくさんの山を踏破して、そこに何があるかをまず理解したうえで、どの山が本当に重要な山か、ということを調べる。まだそういう段階だと思います。」

Q:以前、高校生向けのシンポジウムで本庶さんが『基礎研究を徹底的にやっているから、失敗は絶対しない』とおっしゃっていましたが、その考え方はいつごろから?

「ことばを間違えて欲しくないのだが、実験の失敗は山ほどあります。しかし、大きな流れが進んでいて、『こうだ』と思っていたら断崖絶壁に落ちてしまった、というのはなかったと申し上げた。それは、崖に行く前に気付かないといけないという意味です。サイエンスというのは、だんだんと積み上がっていくんです。積み上がっていくときに、端と端をつなぐというのは危ない。この間に、たくさん、互い違いつないでいくことで、その道が正しいかどうかがわかる。そういうことを申し上げたわけです」

iPS細胞 血小板、臨床承認 京大、1年内に開始へ

厚生労働省の再生医療等評価部会は、血液の難病患者のiPS細胞(人工多能性幹細胞)から血液成分の血小板を作り、患者自身に投与する京都大の臨床研究計画を承認した。iPS細胞から作った細胞を患者に移植する臨床研究や治験が国に認められたのは、目の難病や心臓病、パーキンソン病に続き4例目。血液成分に応用した臨床研究は世界初となる。今後1年以内の開始を目指す。

慶応大病院 第三者精子で治療停止 親知る権利で提供減

第三者の提供精子を使い、不妊治療を実施してきた慶応大病院が、提供者の減少を理由に新規の患者の予約受け付けを停止した。提供者への説明の際、生まれた子どもに遺伝上の親を知る権利を認める動きが世界的に広がっていることを伝え始めた結果、提供者が減少したとしている。

医療費 最高42兆円 1人当たり33万円 昨年度

厚生労働省は、2017年度に病気やけがの治療で全国の医療機関に支払われた医療費の概算が前年度比2・3%増の42兆2000億円に達し、2年ぶりに過去最高を更新したと発表した。前年度から9000億円増えた。1人当たりは前年度比8000円増の33万3000円。
厚労省は「高齢化と医療の高度化で医療費が増加する傾向は当面変わらない」と分析している。16年度は、C型肝炎治療薬「ソバルディ」といった高額薬の公定価格が大幅に引き下げられた影響で医療費が減ったが、17年度はこうした特殊要因がなく増加に転じた。

医師不足

「医師が無制限に増えると、国民医療費総額が増える。そうなると国家予算にも影響が出て国家の危機となりかねない。」これは医療費亡国論という学説で、国はこれを長い間支持してきました。その為に医師の数は、国によって厳密に管理されてきたのです。その結果、医師不足の問題が起こってきています。
医師は、それでも不足していると問題になります。医療が崩壊する問題があるのです。それらは「患者のたらい回し」「産科減少による難民状態」「医師の過労死」「閉院」などです。政府の見解は、「絶対数は足りているが、都会と地方の格差が有り偏在の問題」といいます。医師会は「絶対数の不足」を訴え、対立しています。

日本医療の現状と問題点

日本は世界で一番高齢者の割合が多い国です。そのため病気や怪我で医療にかかる支出がとても多くなってきています。日本は「国民皆保険」制度があり、国民全員が何らかの保険に入り医療を受ける事ができ、高齢者の分を若い世代が支えるというシステムをとっています。しかし現在は少子化が続き、高齢者を充分に支えるだけの保険料をまかなえていないのが実情です。また、医師や看護師など医療業界の人材不足は深刻で、医師がいないため休廃業や解散する医療機関も増えています。

不足する医師と看護師

人は加齢と共に身体が弱り、病気や怪我が多くなります。高齢化社会が進んでいる日本にとって、医療の充実はとても重要です。しかし、現在医療業界では医師や看護師の人材不足が深刻な問題となっています。今まで2人で行っていた治療も1人で行う事が多く、医師や看護師にかかる労働時間や精神的負担がどんどん増えていくため、医療ミスや過労、精神障害なども発生しています。医療業界の人材不足を解消するためには、労働環境の改善や人材育成が必要です。

相次ぐ医療機関の休廃業

2005年から2014年までの10年間に医療機関の倒産が368件ありました。特に病院の倒産が多く52件ありました。その後、倒産件数は減少していますが、休廃業や解散する医療機関は増加しています。医療機関の休廃業や解散の理由には、病院の一極集中による競争や地方の慢性的な医師不足があります。その他にも、医療機関の代表者の高年齢化による後継者難や事業継承がうまくいかないといったことも原因です。また、介護事業者の休廃業や解散も増加しています。

破綻寸前である日本の医療保険

日本ではすべての国民がなんらかの医療保険に加入し、必要な医療を受ける事が出来る「国民皆保険」という制度をとっています。しかし、現在この「国民皆保険」制度が破綻寸前になっています。その原因は、医療保険の収支バランスが崩れはじめているからです。医療保険は、若い世代が高齢者の医療を支える制度になっていましたが、現在は少子化が続き高齢者が増えたため、保険料の収入より医療費の支出が多くなっています。また、医療技術が高度化したため、高額医療が増えている事も原因の1つになっています。

その他

日本の現状と問題点

日本では、生殖補助医療を行う医院の数が他国に比べ非常に多く、広く普及している。実施の条件などについて公的な規制はなく、産科婦人科学会の自主指針があるだけだが、その内容は比較的抑制的である。カップル間の体外受精の利用は法律婚・事実婚の夫婦に、第三者の精子の提供を受ける人工授精は法律婚夫婦に限られ、第三者からの卵子や受精卵の提供は認められておらず、代理出産も禁じられている。これに対し1990年代末以降、学会のルールに背いて卵子提供による非配偶者間体外受精や代理出産を行う医師が出るに及び、厚生労働省と法務省が実施条件や親子関係のルールを定める審議会答申を重ねたが、立法は実現していない。この間、第三者提供を伴う生殖補助医療を介して生まれた子との親子関係を争う訴訟が複数おこり、日本でも実際にそうした問題が起こっていることが明らかになった。国内ではできない生殖補助医療を海外に行って受け、生まれた子との親子関係が国内法上認められないケースも出てきた(2007年3月23日の最高裁判所判例では、日本人夫婦がアメリカで行った代理出産について、依頼者女性と生まれた子の母子関係を認めないという判断が下された。この後、特別養子縁組が申請され、認められた)。広がる一方の生殖補助医療に対し、日本社会の親子関係の実態をふまえて、ルールを確定する立法を行う必要がある。新しい技術の安全性を評価する仕組みも必要であろう。

EBM 

根拠に基づく医療(evidence-based medicine, EBM)とは、「良心的に、明確に、分別を持って、最新最良の医学知見を用いる」(“conscientious, explicit, and judicious use of current best evidence”) 医療のあり方をさす。エビデンスに基づく医療とも呼ぶ。
治療効果・副作用・予後の臨床結果に基づき医療を行うというもので、専門誌や学会で公表された過去の臨床結果や論文などを広く検索し、時には新たに臨床研究を行うことにより、なるべく客観的な疫学的観察や統計学による治療結果の比較に根拠を求めながら、患者とも共に方針を決めることを心がける。

医学・保健医療の用語「エビデンス」

一般には、医学および保健医療の分野では、ある治療法がある病気・怪我・症状に対して、効果があることを示す証拠や検証結果・臨床結果を指す。エビデンスは、医療行為において治療法を選択する際「確率的な情報」として、少しでも多くの患者にとって安全で効果のある治療方法を選ぶ際に指針として利用される。
つまり、「この患者はAという病気である確率がoo%。このAという病気をoo%でもつ患者にB治療法はXX%の確率で効果がある」として、他の治療法と比べて最も効果のある治療法を選択する際の基準選に利用される。言いかえれば、患者の治療に際して、効果の確率(効果量effect size)を知るための手段がエビデンスであり、この効果量がどの程度の確率で正しいかを知るための手段の客観的な基準がエビデンスである。高いエビデンスを求める方法として、ランダム化比較試験、コホート研究、症例対照研究が挙げられる。ただし、生物には個体によるゆらぎがあるため、これらの一般的な確率は個々の患者の状態によって適切に修正されなければならない。
この分野において、「エビデンスがある」と言えば、一般的には「科学的根拠」という意味であり、「エビデンス・レベル」は、個々の修正が適切であれば、確率の「信頼度」と言い換えることができる。

認知症 

認知症は認知障害の一種であり、後天的な脳の器質的障害により、いったん正常に発達した知能が不可逆的に低下した状態である。認知症は犬や猫などヒト以外でも発症する。狭義では「知能が後天的に低下した状態」の事を指すが、医学的には「知能」の他に「記憶」「見当識」を含む認知障害や「人格変化」などを伴った症候群として定義される。これに比し、先天的に脳の器質的障害があり、運動の障害や知能発達面での障害などが現れる状態は知的障害、先天的に認知の障害がある場合は認知障害という。単に老化に伴って物覚えが悪くなるといった誰にでも起きる現象は含まず、病的に能力が低下して性格の先鋭化、強い承認欲求、理性的思考力衰退、被害妄想を招く症状をさす。
日本ではかつては痴呆(ちほう)と呼ばれていた概念であるが、2004年に厚生労働省の用語検討会によって「認知症」への言い換えを求める報告がまとめられ、まず行政分野および高齢者介護分野において「痴呆」の語が廃止され「認知症」に置き換えられた。各医学会においても2007年頃までにほぼ言い換えがなされている。
認知症は70歳以上人口において2番目に多数を占める障害疾患である。全世界で3,560万人が認知症を抱えて生活を送っており、その経済的コストは全世界で毎年0.5-0.6兆米ドル以上とされ、これはスイスのGDPを上回る。患者は毎年770万人ずつ増加しており、世界の認知症患者は2030年には2012年時点の2倍、2050年には3倍以上になるとWHOは推測している。
現在の医学において、認知症を治療する方法はまだ見つかっていない。安全で効果的な治療法を模索する研究が行われているが、その歩みは難航している。
厚生労働省研究班によると、65歳以上で認知症の人は2012年時点で約462万人。いくつかのタイプがあり、記憶障害が典型的な症状の「アルツハイマー型」が最も多く、7割近くを占める。脳出血など脳血管障害が原因の型が2割ほど、幻視などを伴う「レビー小体型」が4%ほどとされる。高齢化で25年には高齢者の5人に1人の700万人に増えるとみられている。65歳未満で発症する若年認知症の人も09年発表の厚労省調査で推計約3万8千人いる。

薬剤耐性

耐薬性のこと。単に耐性または抵抗性ともいう。薬物を反復投与すると,そのあとでは同じ量を投与しても当初と同様の効果が現れず,所期の効果を得るためには用量を増す必要のあることがある。この現象をさす。原因としては,薬物の吸収,代謝などが変化する場合と,生体細胞の抵抗性が増大する場合がある。特にモルヒネ,アルコール,催眠剤などでみられる。ある薬物に耐性を生じると,類似の薬物に対しても耐性が現れることがあり,これを交差耐性という。
単に耐性ともいう。薬物を反復投与していくと、その薬物に対して生体の感受性が低下することがしばしばみられる。すなわち、連用により同じ用量を投与しても効果が現れず、徐々に増量していかなければ効かないという現象を耐性toleranceという。一方、化学療法剤では、反復投与により病原寄生体がその薬物に対して感受性の低下をおこし、効かなくなる現象がみられる。この場合の耐性は抵抗性resistanceとよんで区別される。つまり、生体側の薬物に対する感受性低下現象がtoleranceで、耐容性、耐薬性ともいわれ、生体には関係のない、微生物など病原寄生体そのものの感受性低下現象がresistanceである。薬剤耐性を示す薬物としては、催眠薬、モルヒネ、アルコールなどが知られる。また、ごく短時間内に現れる耐性をタキフィラキシーTachyphylaxie(ドイツ語) あるいはタキフィラキシスtachyphylaxisといい、急性耐性ともよばれる。エフェドリンがよい例で、1回目の数分後に2回目の投与を行っても薬効が明らかに減弱する。
なお、抗生物質・化学療法剤ではペニシリン系、セフェム系、アミノ糖系、パラアミノサリチル酸製剤、イソニアジドなど、多くの薬剤に耐性菌が発現しており、耐性菌に対する新しい薬物の開発が進められている。とくに抗微生物薬の耐性については、化学構造の類似した薬物に対しても耐性現象がみられ、交叉(こうさ)耐性とよばれる。他の薬物についても、同様な交叉耐性がみられる。

障害概念の有無

国際生活機能分類(International Classification of Functioning, Disability and Health;ICF)は、2001年のWHO総会において改定された、人間と環境との相互作用を基本的な枠組みとして、ひとの健康状態を系統的に分類するモデルです。
大きく「生活機能と障害」と「背景因子」の2分野からなり、生活機能(functioning)は「心身機能・身体構造(body functions and structures)」「活動(activities)」「参加(participation)」の3要素で、背景因子(contextual factors)は「環境因子(environmental factors)」と「個人因子(personal factors)」の2要素で構成されます。障害(disability)は、構造の障害を含む「機能障害(impairments)」「活動の制限(activity limitation)」「参加の制約(participation restriction)」のすべてを含む包括な用語としてもちいられています。
ICFの下位分類は、活動と参加の関係や個人因子に関するものなど、まだ未解決なものもあります、その概念的枠組みは、国際的に承認された唯一の共通概念、共通用語であり、生活機能を環境との相互作用としてとらえる視点は重要です。日本の政府は、保険・医療・福祉・教育・行政などすべての職域、領域を超えて、ICFを共通の概念、用語として用いるということを決めました。
心身の機能やその障害の状態が環境によって変化します。また、心身機能が同じ状態であっても、その人がどのような背景(個人因子)をもち、どこでだれと(環境因子)生活するかによって、日々の生活における活動や参加の状態は異なります。たとえば、統合失調症の幻聴や関係妄想、認知症高齢者の周辺症状など、精神認知機能の障害は、環境の影響を大きく受け、どこで、だれと、どのような状態で過ごすかによって異なる。この心身の機能や障害が、個人固有のものではなく、環境など背景因子との相互作用によるもので、さらに、それぞれが促進因子にも阻害因子にもなりうるという基本的な概念が示されたことは、今後の保健・医療・福祉・教育とすべての領域において、大きな意味をもたらすと思われます。
個人因子は、性別、人種、年齢、その他の健康状態、体力、ライフスタイル、習慣、生育歴、困難への対処方法、社会的背景、教育歴、職業、過去および現在の経験(過去や現在の人生の出来事)、全体的な行動様式、性格、個人の心理的資質、その他の特質などが含まれます。そのため、その内容が宗教からイデオロギーまで含み、現時点では扱いが難しいため、ICFの分類には含まれていません。しかし、臨床上は大変重要な因子であるため、構成要素間の関係を示す図には個人因子も含まれています。

【 投稿者紹介 】 
※ 小論文・面接の指導実績
 高校入試(県内トップ高推薦入試合格)、大学入試(有名私立大学MARCH合格、国公立医学部推薦入試合格、自治医科大学合格)、作文・読書感想文コンクール(上位入賞)、就職試験、公務員試験合格など、小論文・面接が課された様々な試験対策指導において多数(高確率)の合格実績があります。小論文が苦手な方に、少しでもお役に立てれば幸いです。 

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