スポーツ感動の実話 伝説の400勝投手 金田正一

出典:スポニチAnnex

ヤクルトスワローズの日本一で幕を下ろした今年のプロ野球。
オリックス・ヤクルトともに前年最下位からのリーグ優勝という劇的な「日本シリーズ」で、歴史に残る熱戦を繰り広げました。
このヤクルトスワローズの前身「国鉄スワローズ」時代に在籍したのが、伝説の400勝投手 金田正一です。

不滅の金字塔400勝

投手起用の仕方に現在とは大きな違いはあるものの、大投手の証である「名球会」入りの200勝も難しい中、通算400勝200勝達成は何と24歳!という不滅の金字塔を打ち立てた彼は、史上最多奪三振(4,490)の他、298敗という最多敗戦記録も持ちます。通算防御率2.34(MVP大谷君の今年の防御率は3.18)という驚異的な数字からは信じがたい敗戦数です。
当時の国鉄スワローズは、「打てば三振、守ればエラー」と言われるほどの弱小球団で(在籍15年間の勝利数353勝は、球団の全勝利数の42%にあたる)、打線の援護がなかったことが大きな要因でした(他球団であれば、500勝は余裕だったというのが大方の見方です)。

しかし、そもそも彼は、他球団からの好条件の誘いを断り、自らこの球団を選んで入団しました。
そこには、悲しい理由がありました。

弱小球団入団の理由

彼は、高校を中退し17歳でプロ入りしています。貧窮により弟妹を亡くしている彼は、「貧しい家族を一日も早く楽にさせたい。」そんな優しい思いからでした。
彼が選んだ球団は、設立間もない「国鉄スワローズ」。弱小球団で、契約金も他球団の半分ほどの国鉄をなぜ選んだのか…。
契約を決定づけた条件は、宿舎で「ご飯を好きなだけ食べていい。」だったといいます。
当時、新人は食事の際、おかわりは許されていませんでしたが、弟妹たちにご飯を食べさせるため常に空腹を我慢していた彼の最大の望みは「腹いっぱい食べてみたい!」だったのでしょう。

長嶋茂雄のデビュー戦 4打席4三振の真相

出典:共同

金田といえば、東京六大学のスター選手で鳴物入りで巨人入りし、オープン戦でも7本塁打を放っていた怪物ルーキー長嶋茂雄のデビュー戦4打席4三振に仕留めた話はつとに有名ですが、実は彼には闘志みなぎる別の理由がありました。
彼はこの日、進行癌に侵されていた父親を東京の病院に見せるため、名古屋から呼び試合を観戦させていました。
野球が大好きな父親が、もう二度と球場に足を運べないことを知っていた彼は、この試合、一球一球に渾身の力を込めました。
父親に自分の勇姿を目に焼き付けて欲しいと願う彼にとって、大注目のスター長嶋を迎え撃つこの試合は、闘志を沸き立たせる最高のお膳立てだったのかもしれません。
この試合後も、弱小球団の国鉄でも巨人戦だけはテレビ中継があるため、父親が病室で観戦していると信じてマウンドに向かいました。
自分が活躍することで父親を元気づけようと日々猛練習を重ねながら魂の投球を続け、70日目で20勝到達という最速記録を打ち立てるなど、この年31勝14敗、防御率1.30311奪三振投手三冠を独占(この防御率で14敗とは…)という、とてつもない成績を残しました。

情熱の男 ”カネやん” 逝く

今年、大谷翔平選手が、メジャーリーグで二刀流の大活躍でMVPを獲得し、スポーツ界を沸かせましたが、金田氏も、投手として史上1位の通算本塁打38本うち2本は代打起用でのホームラン)、通算8度の敬遠、野手を含めた史上最年少(17歳2ヶ月)でのプロ入り初ホームランなど、打撃でも強打を誇りました。

情熱の男、金田正一。160㎞ともいわれる剛速球(残された映像解析の結果)と、伝家の宝刀カーブを武器に、数々の伝説を作り上げた「黄金の左腕」。あまりの酷使で、プロ入り6年目から痛みに悩まされ続けた左肘は、いつしか真っすぐ伸ばせなくなっていました。

長嶋のデビュー戦、金田の剛速球に4打席4三振を喫した長嶋がバットにかすったのは、ファールチップ1球のみと、完膚なきまでに封じ込めました。
しかし、試合後、金田はこう語っています。「あいつは、恐ろしいやっちゃ。いくら空振りしても、小細工せずフルスイングしてきよる。今にすごいバッターになるで。」
金田の予言どおり、金田 対 長島の通算対戦成績は、打率.313で、長島に軍配が上がりました。

400勝など数々の栄光を手に、20年に及ぶ現役生活に別れを告げた金田氏。
記者が「自分で一番誇れる記録は?」と問いかけると、

「生涯、ただの一度もビンボールを投げなかったことやな!」

そう笑顔で答えました。引退会見での言葉が、まっすぐな彼の生き方を物語っていました。

最後に、彼の優しさを象徴するエピソードを…。
高校を中退し、卒業式に出られなかった彼は、飲み会の席でよく「仰げば尊し」を歌っていたそうです。「先生方への感謝を伝えたかった」と

魂の男、金田正一。人を想う心こそが最高の力になる「優しさこそが本当の強さ」であることを、私たちに教えてくれた不世出のスーパースターは、2019年、永遠の眠りにつきました。

ご冥福を心からお祈りいたします。ありがとう!”カネやん”

出典:デイリー

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